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陰翳礼賛(いんえいらいさん)

緑と和室の陰翳

 Yahoo!ニュースで興味深い記事を読みました。

近年、ブラック企業が取りざたされることが多く
働き方改革に取組むホワイト企業が増えています。

その一方で、職場や仕事が「ゆるすぎる」「ここにいたら成長できない」と、危機感を感じて辞めていく若者が増えている・・・
その様な「ホワイト離職」が増えている。

端的にまとめますと、ブラック企業は当然のこと自分の成長が感じられない場合も離職につながる
といった内容でした。

自分の成長につながるもの?

 一見、納得のいく内容です。
仕事の指導方法を工夫したり、仕事の価値をきちんと伝えることは、とても大切だと思います。

ただ、何をもって「自分の成長につながる」と判断するのかは、安易に考えて分かるものではありません。

私自身、何年も経ってから振り返ったときに、成長につながったと気付いたこともたくさんあります。
また、成長につながることは人から与えらえるものではなく、自分で見出すものであると思います。

そして、自分一人だけで仕事ができる人はいません。誰もが、周りの人の協力を得ながら仕事を進めています。

助け合うことがなければ、仕事はできません。

どんな仕事にもできればしたくない部分があります。嫌なことだけど、成長にはつながらないかもしれないけど、誰かがしてくれるので、みんなが助かるのではないでしょうか。

うがった見方かもしれませんが、Yahoo!ニュースの内容には、自分中心の考え方に寄っている部分を感じました。

陰翳(いんえい)にこそ価値がある

 話は変わりますが、『陰翳礼賛』という書籍をご存じでしょうか。
著者は、文豪の谷崎 潤一郎です。

※画像は、写真家の大川 裕弘の作品と合わせて表現しているもので、とても読みやすいです。

内容は、「日本の美学」に影響を与えた陰翳(うすぐらいかげ)についての評論・随筆です。
家屋、内装、調度品、器、食、人物など多岐に渡り、「日本の美学」に影響を与えている陰翳について書かれています。

とても印象に残った一文をいくつかご紹介します。

『暗い部屋に住むことを余儀なくされたわれわれのの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った』

『日本人の思索のしかたは、美は物体にあるのではなく、物体と物体が作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える』

私は、この本を読んで深く気付かされるものがありました。

陰、翳、影、かげ・・・言葉で聞くだけでは、あまり良い印象がありません。
暗い、後ろ向き、悲しいといった感じでしょうか。

でも古の日本人は、その陰翳を拒否するのではなく活用した、陰翳にこそ価値があると考えたのです。

キャリア形成を考えるとき、自分の成長を意識するのはとても意味のあることだと思います。

しかし、華々しいこと、目に留まりやすいことだけが、成長につながるわけではありません。

多くの人が見過ごすことに気付く感性、一見不利なことでも有意義なことに変えてしまうたくましさ、自分のことだけでなく、全体を見ることができる視野の広さなどが必要だと思います。

それらを伴わせることで、幅が広く奥行きのあるキャリアを形成していきたいです。

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